45℃。
お風呂なら、
「ちょっと熱いな」
と感じるくらいの温度です。
ところがNVIDIAは、
次世代AIシステム「Vera Rubin NVL72」を、
この45℃の温水で冷やします。
しかもRubin世代では、
GPUだけではありません。
CPU。
ネットワーク。
スイッチ。
AIラックの主要部品を含めて、
「100%液冷」。
ファンすら使わない設計へ進みます。
少し不思議ですよね。
コンピューターを冷やすなら、
できるだけ冷たい水を使った方が良さそうに見えます。
でも実際は逆です。
45℃でも十分に熱を奪えるなら、
わざわざ大量の電気を使って水を冷たくする必要がない。
つまり、
AIデータセンターでは、
「GPUを冷やす技術」
そのものが、
電力効率を左右するようになってきました。
前回の記事では、
古河電工がAI向け光通信だけでなく、
水冷モジュールまで増産している話を書きました。
なぜ電線・光通信の会社が、
突然GPUを冷やし始めるのか。
今回はその答えです。
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AIは「計算能力」を上げた結果、自分の熱に苦しみ始めた
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AIの性能競争は、
かなり分かりやすい方向へ進んできました。
もっと高性能なGPUを作る。
↓
1ラックにもっとGPUを入れる。
↓
計算能力を上げる。
↓
もっと大量のAI処理ができる。
ここまでは良い。
問題は、
GPUが大量の電気を使うことです。
電気を使えば、
熱が出ます。
そしてGPUを高密度に並べるほど、
狭い空間から大量の熱が発生します。
つまり、
AIラックの性能を上げれば上げるほど、
「どうやって熱を外へ逃がすのか」
が難しくなる。
これはもう、
エアコンを強くすれば解決するような話ではありません。
Open Compute Projectでは、
次世代AIラックの電力密度が500kWを超える可能性を前提に、
液冷が重要になるとしています。
500kW。
ラック1本です。
AIの競争は、
「どれだけ速く計算できるか」
だけではなく、
「その計算能力を冷やし続けられるか」
まで含めた競争になっています。

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そもそも、今までどうやって冷やしていた?
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これまでのデータセンターでは、
基本的に空冷が中心でした。
サーバーの前から、
冷たい空気を入れる。
↓
CPUやGPUの熱を奪う。
↓
後ろから熱い空気を出す。
↓
空調設備で再び冷やす。
パソコンの中にファンが付いているのと、
考え方はそれほど変わりません。
もちろん現在も、
空冷が突然なくなるわけではありません。
低密度ラック。
従来型サーバー。
ストレージ。
ネットワーク機器。
こうした場所では、
今後も空冷は使われます。
問題なのは、
最先端AIです。
GPUを狭いラックへ大量に詰め込むと、
空気だけで熱を運ぶのが難しくなります。
そこで、
発想を変える。
「部屋全体を冷やす」
のではなく、
「熱が出ている場所から直接熱を取る」。
これが液冷です。
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液冷といっても、GPUを水の中へ沈めるわけではない
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「液冷」と聞くと、
サーバーを水槽へ沈めるような姿を想像する人もいるかもしれません。
実際、
Immersion Cooling。
いわゆる液浸冷却という方式もあります。
ただ、
現在AIサーバーで主流になりつつあるのは、
Direct-to-Chip。
名前の通り、
チップから直接熱を取る方式です。
GPUの上に、
「Cold Plate」
という金属板を付けます。
その中へ冷却液を流す。
GPUが熱くなる。
↓
Cold Plateが熱を受け取る。
↓
冷却液が熱を運ぶ。
↓
外で熱を逃がす。
かなりシンプルです。
人間で考えるなら、
暑い部屋全体へ冷房をかけるのが空冷。
熱を持った場所へ直接冷却パックを当てるのが液冷。
そんなイメージです。
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ここで出てくる「CDU」がかなり重要
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ただし、
GPUへ冷却液を流せば終わりではありません。
液体を、
適切な温度。
適切な圧力。
適切な流量。
で循環させる必要があります。
そこで出てくるのが、
CDU。
Coolant Distribution Unit。
日本語なら、
「冷却液分配装置」
です。
ざっくり言えば、
AIデータセンターの液冷を管理する装置。
施設側の冷却設備と、
GPU側の冷却配管をつなぎます。
施設側
↓
CDU
↓
ラック
↓
Cold Plate
↓
GPU
冷却液を送り、
GPUの熱を持って帰ってきた液体から熱を逃がし、
またGPUへ送る。
これを繰り返します。
だからAIデータセンターで液冷が増えるほど、
Cold Plateだけではなく、
CDU。
ポンプ。
配管。
バルブ。
熱交換器。
センサー。
まで必要になります。

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では、なぜ「45℃」なのか
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ここが一番面白いところです。
普通なら、
冷たい水ほどGPUを冷やしやすい。
これは間違っていません。
でも、
その水を冷たくするには、
別のエネルギーが必要です。
例えば、
35℃まで冷やす。
そのために大型チラーを動かす。
↓
電気を使う。
↓
AI計算に使える電力が減る。
これでは、
せっかく発電所から大量の電気を持ってきても、
冷却設備にかなり取られてしまいます。
一方、
NVIDIAのVera Rubin NVL72は、
45℃の温水を使います。
これくらいの温度なら、
地域によっては外気を使って水を冷やせます。
つまり、
大型冷凍機をずっと動かさなくてもいい。
NVIDIAは、
45℃の温水設計によって、
冷却へ使うエネルギーを減らし、
その分をGPUへ回せるとしています。
ここで、
液冷の意味が変わります。
「GPUを壊さないための設備」
だけではない。
「1MWの電力から、どれだけAI計算を取り出せるか」
を決める設備でもある。
つまり、
冷却効率が上がれば、
同じ電力契約でも、
より多くのGPUを動かせる可能性があります。
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NVIDIAは「同じ電力で最大30%多くGPUを動かす」世界を狙っている
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NVIDIAのVera Rubin設計には、
もう一つ面白い考え方があります。
データセンターが契約している電力には、
上限があります。
例えば、
100MWまで。
と決まっていたら、
勝手に200MWは使えません。
つまりGPUを増やしたくても、
電力の上限が壁になります。
そこでNVIDIAは、
電力制御と45℃液冷を組み合わせ、
同じ電力枠の中で、
最大30%多くGPU容量を確保できる可能性を示しています。
これはかなり重要です。
AIデータセンターはいま、
「電気が欲しくても手に入らない」
という問題を抱えています。

電力が増やせないなら、
一つの答えは、
「今ある電力を無駄にしないこと」。
冷却に使う電気を減らせば、
その分、
GPUへ使える。
AI時代では、
冷却設備が、
計算能力そのものを増やす装置になり始めています。
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Rubinは「GPUだけ液冷」ではなく100%液冷
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そして2026年、
NVIDIAはさらに一段進みました。
Rubin世代では、
GPUだけではありません。
CPU。
ネットワーク。
スイッチ。
主要部品を、
液冷化。
NVIDIAは、
Rubin世代を
「100% liquid-cooled」
と説明しています。
しかも、
ファンなし。
これはかなり象徴的です。
これまで液冷は、
「熱いGPUだけ特別に水で冷やす」
というイメージが強かった。
でもRubinでは、
AIラックそのものが、
液冷前提になります。
つまり、
液冷はオプションではなく、
最先端AIを作るための基盤へ変わり始めています。
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Vertiv
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この流れで、
かなり分かりやすい企業が、
Vertivです。

Vertivは、
UPS。
電源設備。
冷却設備。
そして、
CDU。
を持っています。
つまり、
GPUへ電気を届ける。
↓
発生した熱を液体で取る。
↓
施設外へ逃がす。
ここをまとめて扱える。
同社のCoolChip CDUは、
Direct-to-Chip。
Rear Door Heat Exchanger。
の両方に対応。
ラック内。
ラック横。
設備室側。
とデータセンターに合わせて配置できます。
AIラックの密度が上がるほど、
こうした冷却設備の重要性も高くなります。
VertivがAIインフラ株として注目される理由は、
GPUそのものではなく、
「GPUを止めずに動かす設備」
を持っているからです。
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古河電工もつながる
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前の記事で紹介した古河電工。
光ファイバー。
レーザー。
光半導体。
だけではなく、
水冷モジュールも持っています。
【関連記事】

2026年3月。
古河電工は、
データセンター向け水冷モジュールと空冷ヒートシンクの生産能力増強を発表しました。
追加投資額は、
約550億円。
そのうち、
約510億円が水冷です。
さらに過去の投資まで合わせると、
水冷モジュールの増産投資は、
約740億円。
会社が目指している売上もかなり大きい。
水冷モジュール売上。
2027年度
1000億円以上。
2030年度
4000億円。
を想定しています。
これを見ると、
古河電工が水冷を、
「ついでの事業」
として扱っていないことが分かります。
会社自身が、
AIデータセンターの冷却需要を、
次の大きな成長市場として見ています。
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「光」と「冷却」が古河電工の中でつながる
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古河電工が面白い理由として、
「AIデータセンター内部を広く取れる」
と書きました。
今回の話で、
さらにつながります。
AI性能向上
↓
GPU増加
↓
通信量増加
↓
光通信が増える
↓
ネットワーク機器も高性能化
↓
GPUも光モジュールも熱くなる
↓
水冷需要増加
つまり、
光通信が伸びれば、
古河電工の光製品が売れる。
その設備が高性能になれば、
今度は冷却製品も必要になる。
同じAIデータセンターの中で、
複数の成長テーマがつながります。
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液冷でお金が流れるのは「冷却メーカー」だけではない
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ここは投資家として重要です。
液冷が普及すると、
一社だけが儲かるわけではありません。
NVIDIA
→ 液冷前提のAIラック
Vertiv
→ CDU・熱交換・データセンター冷却
古河電工
→ Cold Plate・水冷モジュール・放熱
サーバーメーカー
→ 液冷対応サーバー
ポンプ・バルブ・配管メーカー
→ 冷却液を循環
データセンター事業者
→ 既存設備を液冷対応へ改修
つまり、
GPUの高性能化によって、
「冷却」という新しい設備投資が、
サプライチェーン全体へ広がっています。

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ただし「AI=全部液冷」ではない
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ここは冷静に見たいところです。
Rubinが100%液冷だから、
すべてのデータセンターが液冷になる。
これは違います。
従来サーバー。
ストレージ。
低密度ラック。
既存設備。
こうした場所では、
まだ空冷で十分なケースがあります。
さらに、
液冷にも課題があります。
配管が必要。
施工技術が必要。
漏水対策が必要。
水質管理が必要。
既存データセンターでは改修費がかかる。
メーカーごとの接続規格が違えば、
運用も複雑になります。
だからOpen Compute Projectも、
CDU。
Cold Plate。
接続部。
などの標準化を進めています。
液冷は、
単純に空冷と置き換わるというより、
「AIの高密度領域から広がっていく」
と考える方が自然です。
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私が一番見るのは「液冷市場の大きさ」ではない
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液冷市場○兆円。
年率○%成長。
こういう数字もあります。
でも私は、
それより見たいものがあります。
「1ラックあたり何kWになっているか」
です。
例えば、
GPU性能が上がっても、
ラックの電力密度が20kWのままなら、
液冷への移行はそれほど急ぎません。
でも、
100kW。
200kW。
500kW。
と上がるなら、
話は違います。
空気で処理するのが難しくなり、
液冷の必要性そのものが高まります。
だから投資家としては、
液冷市場予測だけを見るより、
NVIDIAの次世代ラック。
GPU消費電力。
kW/rack。
CDU出荷。
Cold Plate需要。
データセンターの液冷対応率。
この辺りを追った方が、
実需が見えやすいと思っています。
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もう一つ見るべきなのが「誰が利益を残せるか」
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AI需要が大きい。
液冷需要も伸びる。
だから液冷企業なら全部買い。
ではありません。
市場が大きくなれば、
当然競合も増えます。
製品が標準化すれば、
価格競争も起きます。
さらに、
工場増設。
研究開発。
施工人員。
保証。
などにお金がかかれば、
売上が増えても利益が残らないことがあります。
だから見るべきなのは、
受注。
売上。
だけではありません。
利益率。
キャッシュフロー。
生産能力。
顧客。
競争優位。
ここまで見たい。
古河電工の2030年度4000億円という目標も、
達成したかどうかだけではなく、
「その売上からどれだけ利益を残せたか」
まで追う必要があります。
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AIインフラを追うと「次の不足」が見えてくる
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ここまでの記事を振り返ると、
かなり面白い流れになっています。
GPUが足りない。
↓
HBMが必要。
↓
データセンターを建てる。
↓
電力が足りない。
↓
資金が必要。
↓
GPUを大量につなぐ。
↓
光通信が必要。
↓
高速化した設備が熱くなる。
↓
液冷が必要。
一つの問題を解決すると、
次の問題が出てきます。
私はこれが、
AIインフラ投資を追う面白さだと思っています。
「次にどのAI株が上がる?」
だけではなく、
「AIが成長したら、次に何が足りなくなる?」
と考える。
そうすると、
NVIDIAだけを見ていたときには見えなかった企業が、
次々につながってきます。
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まとめ|AI時代は「冷やせる量」が計算能力を決める
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Vera Rubin NVL72は、
45℃の温水を使ったDirect Liquid Coolingを採用します。
Rubin世代では、
GPUだけではなく、
ネットワーク部品まで含めて100%液冷。
ファンもなくなります。
なぜそこまで冷却が重要なのか。
理由はシンプルです。
AIの性能を上げる。
↓
GPUを増やす。
↓
電力を使う。
↓
熱が出る。
↓
その熱を処理できなければ、
GPUを増やせない。
つまり、
AIデータセンターでは、
「冷却できる量」が、
そのまま「設置できる計算能力」の上限になり始めています。
だから、
VertivがCDUを作る。
古河電工が水冷へ約740億円を投資する。
NVIDIAがラック全体を液冷化する。
全部、
同じ方向を向いています。
AIは、
GPUだけの産業ではありません。
大量の電気を届ける。
大量のデータを動かす。
そして、
大量の熱を捨てる。
この3つがそろって、
初めて巨大AIが動きます。
私は次世代AIを見るとき、
GPU性能だけではなく、
「そのGPUを何台、冷やし続けられるのか」
まで見たいと思っています。
そして、
液冷の次に気になるのが、
AIラックへどうやって大量の電気を届けるのか。
NVIDIAが進めている、
「800V DC」です。
AIラックが500kW級へ向かうと、
今までの電力供給方式そのものにも限界が出てきます。
次の記事では、
なぜAIデータセンターが高電圧化するのか。
800V DCになると何が変わるのか。
ここを掘っていきます。
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関連記事
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古河電工の光通信・冷却事業を見る

AI×光通信から理解する

AIデータセンターの電力不足

Vertivの電源・冷却事業

AIデータセンター関連企業を比較

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投資に関する注意事項
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投資には元本割れを含むリスクがあります。
企業の最新開示、株価水準、ご自身のリスク許容度などを確認したうえで、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。



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